2014年7月17日木曜日

航空自衛隊の次期支援戦闘機

実際、米国は技術的優越性の確保について、冷戦当時よりもさらに大きな比重を与えるようになってきた。冷戦当時は、技術の優越性とは、米国を中心とする西側ブロックの、ソ連を中心とする東側ブロックに対する意味が中心であったが、冷戦後は米国の世界に対する圧倒的な技術的優勢の確保と維持が、米国世界戦略の中で重要な地位を占めるようになっている。

その方針の一端は日本に対する技術競争での警戒心や、フランスに対する技術スパイ活動への反発(一九九三年のパリ航空ショーに対する米軍機出展拒否など)という形になって具体化した。現在米国は航空機、宇宙開発、そして情報の分野で世界に対して大きな優位を占めている。QDR報告書の中でも、米国は宇宙設置システム、指揮・統制・通信・コンピュー々へ諜報・監視・偵察などの分野で潜在的な敵対勢力よりも大幅に優位にあり、かつその能力を増大させているとしている。

すでに航空自衛隊の次期支援戦闘機FS‐X(現F‐2)開発計画において、米国が日本に対する積極的技術移転を渋るだけではなく、日本が独自に開発を行う方法すら妨げようとする外交を展開した。スーパー・コンピュータや通信衛星の開発、輸出入などでの米国の執拗とも言える干渉は、この米国の技術優勢確保戦略に基づいている。今後、米国のこれらの分野におけるきわめて積極的な優位確保のための経済外交戦略は、強化されることはあっても緩和されることはないであろう。広い意味での安全保障という点から、この米国の技術戦略は、今後重要な要素として忘れてはならないものである。

また民間市場においては、軍事、民需双方に広い応用が利く、いわゆるデュアル・ユース技術の開発が加速され、それがためにNBC(核、生物、化学)兵器とその運搬手段である弾道ミサイルや巡航ミサイル(これらをひとまとめに「大量破壊兵器=WMD」と呼ぶ場食が多い)の拡散を抑制することが次第に困難になってきているとの懸念を表してもいる。そして米国は、今後の兵器開発においては、こうしたWMDを相手が使用する可能性を十分に考慮した設計をする必要があると論じている。

QDRにおいて米国は、二一世紀を迎えようとする今の時代はダイナミックで不確実な安全保障環境であるとし、それは米国にとって難しいチャレンジの環境であると同時に、新しい平和、繁栄、国家間の協力態勢強化の新しい可能性を提供するものでもあるとしている。そして、NATO、日米、米韓同盟関係は米国の安全保障にとってきわめて重要なものであり、安定した、繁栄の世界に対する基礎を与えていると断じた。