2016年4月5日火曜日

リストラクチュアリング・ブーム

リストラクチュアリングという用語は、国際金融や財務会計上は累積債務や長短の負債項目の内容構成を改善するための財務的対応を概括する言葉として一般に知られている。

たとえば、金利低下期には長期高利負債を短期低利借入れに切り替える、長期借入れを資本金に置き換えるなどの財務実務をいうのであるし、累積債務国側では高利の先進国民間商業銀行よりの借入れ金を先進国政府よりの低利政府間開発援助に乗り換えるなどもいうのである。

経営学上も不採算部門の売却・切り離し・他社高収益部門の買収等による法人企業財務・経営体質の改善、つまり「再編成、再構築」の意味で企業活性化の一手段としてとらえられている。しかし、リストラクチュアリングという表現が国際金融の面で注目されるのは、後段の経営学上の問題である。

現在、世界の商業銀行群のマーチャント・バンキング化が衆目を集めている中で、この語はいわゆるM&Aと略称される合併・買収のソフィスティケートされた言い換えであるといってもよい。松井和夫氏はM&Aよりリストラクチュアリングの方がむしろ上位の包括的概念と定義されている。

2016年3月4日金曜日

公共事業と福祉事業

そうした自治体の一つが意外にも北九州巾である。同市は大規模な公共投資構想に次々に飛びつき、巨人港湾、海上飛行場、新幹線、多数のハコもののオンパレードで、この百万都市は公共事業の見本市のようになっている。

こうした公共事業のツケは大きい。同市の一般会計は一九九八年度当初予算で五千三百十七億円だが、決算のすんだ一九九六年度一般会計での市債残高は四千四百十七億円にのぼっていた。さまざまな公共事業の財布になる特別会計や企業会計などを含めた全会計では九六年度末の借金は八千五百十五億円に達していた。借金の返済額は九六年度一年間でも八白十五億円と巨額である。財政収支比率、公債費比率といっか指標でみると、市の財政は火の車だ。このため行政改革の名のもとに、三年間で四百人の人員削減などリストラが吹き荒れている。

その北九州市はもう一つの顔を持つ。「福祉先進都市」として知られ、ほかの自治体からの見学責かひきもきらない。児童から高齢者までを対象に、「市レベル」、合併前の五市を前身とする「区レベル」、そして地域密着型の「小学校区」という三層の福祉施設のピラミッドを築いたからだ。こうして福祉のシステムを構築したが、とくに評価されているのが、高齢者や子どもたちが歩いて行ける小学校区に拠点網をはりめぐらせたことだ。

小学校区ごとにできつつある「市民福祉センター」は新築であったり、児童館や学童保育クラブとの合築であったり、公民館を活用したり、小学校の空き教室を利用したりでさまざまであるが、中身の目玉となる第一次高齢者対策実施計画を一九九四年から五ヵ年計画で実施中だ。

この背景には、同市が全国平均より高齢者化のスピードが速く、二〇〇五年には六十五歳以上の高齢者が人口の二〇%に達するため、対策を急がなければならないという事情がある。やはり同市の産業連関表を使った福祉の経済的価値の証明だった。

2016年2月4日木曜日

「補助金臨時整理法」

同じころ、消費税を福祉目的税にする案も浮上してきた。もともと消費税は高齢者対策を口実に導入され、引き上げられたにもかかわらず、本来の目的に使われたのはその一部だったから、それも一案かもしれない。しかし、福祉目的化されると、それを口実に消費税の引き上げが加速される恐れがある。

それに後にみるように、年金問題でまず実行すべきことは、日本の特異な土建国家を解体して、公共事業費を大幅に社会保障に振り向けることでなければならない。年金制度が大幅に改定された一九八五年には、社会保障制度の他の面でも、国民にとってもう一つありかたくない出来事があった。

中曽根首相はこの年、「補助金臨時整理法」を国会で成立させた。第二臨調の提案を具体化したもので、地方自治体への補助金の補助率を削減するものだった。この法律によって、生活保護措置費は、一九五〇年の生活保護法の制定以来、国が十分の八、自治体が十分の二と定められていたが、一九八五年度に限るという条件で、国が十分の七、自治体がに十分の三に変更された。

同様に、保育所措置費、老人ホーム措置費、障害者(児)保護費などの国の負担も軒並みに十分の八から十分の七に引き下げられている。当初、これらの引き下げは「一年限り」の「暫定措置」というものであった。ところが、大蔵省は財政状況の悪化を理由に、引き下げの継続を主張し、中曽根政権は結局、一九八六年度から三ヵ年、「暫定措置」を延長することと補助率のさらなる引き下げを追加決定した。

この決定によって、法律の名前でいうと、「生活保護法」「精神衛生法」などの国家負担率は十分の七が継続されたが、「老人福祉法」「児童福祉法」「身体障害者福祉法」「母子保健法」などの補助率は十分の七からさらに十分の五に大幅に削減された。