2016年3月4日金曜日

公共事業と福祉事業

そうした自治体の一つが意外にも北九州巾である。同市は大規模な公共投資構想に次々に飛びつき、巨人港湾、海上飛行場、新幹線、多数のハコもののオンパレードで、この百万都市は公共事業の見本市のようになっている。

こうした公共事業のツケは大きい。同市の一般会計は一九九八年度当初予算で五千三百十七億円だが、決算のすんだ一九九六年度一般会計での市債残高は四千四百十七億円にのぼっていた。さまざまな公共事業の財布になる特別会計や企業会計などを含めた全会計では九六年度末の借金は八千五百十五億円に達していた。借金の返済額は九六年度一年間でも八白十五億円と巨額である。財政収支比率、公債費比率といっか指標でみると、市の財政は火の車だ。このため行政改革の名のもとに、三年間で四百人の人員削減などリストラが吹き荒れている。

その北九州市はもう一つの顔を持つ。「福祉先進都市」として知られ、ほかの自治体からの見学責かひきもきらない。児童から高齢者までを対象に、「市レベル」、合併前の五市を前身とする「区レベル」、そして地域密着型の「小学校区」という三層の福祉施設のピラミッドを築いたからだ。こうして福祉のシステムを構築したが、とくに評価されているのが、高齢者や子どもたちが歩いて行ける小学校区に拠点網をはりめぐらせたことだ。

小学校区ごとにできつつある「市民福祉センター」は新築であったり、児童館や学童保育クラブとの合築であったり、公民館を活用したり、小学校の空き教室を利用したりでさまざまであるが、中身の目玉となる第一次高齢者対策実施計画を一九九四年から五ヵ年計画で実施中だ。

この背景には、同市が全国平均より高齢者化のスピードが速く、二〇〇五年には六十五歳以上の高齢者が人口の二〇%に達するため、対策を急がなければならないという事情がある。やはり同市の産業連関表を使った福祉の経済的価値の証明だった。