2012年7月2日月曜日

一枚ならばユナイテッド、三枚ならば?

利用者からみたマイレージサービスは、①マイルを獲得しやすい、②提携社が多い、③目標ハードルが高くない、④有効期限が長い、⑤無料チケットで利用できる路線が豊富であることが重要。

これらの項目をチェックすると、全日空とも提携しているユナイテッドの会員カードがもっとも使いやすい。しかし、ユナイテッドは最近この風評を利用して、格安運賃を高めに設定しているフシもあるので、チケット購入の際には要注意だ。

現在の設定条件からすると、米国系エアラインの会員が一番トクだ。どうせ入会金もないのだから、複数枚つくるつもりであるならば、二枚目は、有効期限がなく日本関係の路線の多いノースウェスト(JAS、KLM、コンチネンタル、アリタリアと提携)、三枚目は、有効期限はあるもののアメリカン、ブリティッシュ・エアウェイズ、カンタスなどワンワールド各社で使える日航という組み合わせを用意すれば、日本関係の路線はほとんどカバーできる。

裏ワザでためられる

旅慣れた利用者の中には、マイルを早く獲得するために多少の無理をして無料チケットを楽しんでいる人もいる。

友人のN氏はヨーロッパへの往復を米国経由で行っている。日本からパリまで直行便で飛ぶと6206マイルにしかならないので、一回往復しても特典はつかないが、シカゴで乗り継ぐと東京-シカゴ6268、シカゴーパリ4153で合計1万0439マイル、往復で2万マイルを超えて東南アジアへの無料航空券を獲得できる。

しかも、運賃は直行とほとんど変わらないか、ユナイテッドの格安券ではむしろ安い場合もある(正規のエコノミークラス運賃ならば同額)。

ただ、所要時間が二四上一五時間と倍ほどかかるので、忍耐強さと体力がいる。ちなみに、ノースウエストはデトロイトで、ユナイテッドはシカゴまたはサンフランシスコで乗り継げば、2-3時間の待ち時間でパリまたはロンドン行きに接続する。

マイレージサービスは、「結果として目標に到達する」という使い方が自然である。割高の運賃を購入してまでマイルをためるのは本末転倒だ。

マイレージサービスを含めて、顧客優遇プログラム(FFP)は双方が履行義務を負う契約ではなく、エアラインが一方的に実行を宣言した販売促進策である。エアラインが社会的信用の失墜を恐れなければ、交換比率を大幅に切り上げたり、一年後の打ち切りもあり得る。したがって、無理をせずに、余禄を楽しむゆとりが大切だ。

ためるのが楽なのは米国系

マイレージの加算距離は、一般的には、正規エコノミークラス運賃を100%とし、ビジネスクラスを二五%増しとするが、なかにはエールフランスやルフトハンザ、アリタリアのように100%増しとするエアラインもある。

各社によって対応が異なるのは割引チケットで、日系が個人割引は70%、格安、パックツアーは50%しかカウントしないのに対して、欧米系やアジア主要社は100%、豪州は70%を認める。

重要なのは提携社の多さ。フィリピン航空のように路線が限られているうえに他社との提携がほとんどない会社や、東南アジアに乗り入れていないTWAは日本人に意味がない。


一方、アライアンス(二八九ページ参照)の加盟社は提携し、相互に特典の交換を認め合っているので、一社の会員カードをもっていれば加盟社の搭乗マイレージをすべて一枚のカードにつけることができる。

JASは「ウイングス」と、日航は「ワンワールド」主要社などと提携している。また、ホテル、ショッピングなどの利用店が含まれていれば、飛行機に乗らなくとも得点がたまる。

そして、最近差がついているのが対象期限だ。日系、欧州系は原則として翌々年(JASは三年後)の年末で消滅していくのだが、米国系(アメリカンを除く)、韓国系は無期限になっている。

ただし、完全に無期限(コンチネンタル)、三年以内にマイルの加算が条件(ユナイテッド、ノースウェスト、デルタ)とに分かれる。

さらに、デルタは自社の航空利用が条件だが、ユナイテッド、ノースウェストは提携社やショッピングによるポイントでもよいので、クリアは楽だ。逆にためにくいのはヴァージン(格安、ツアーは対象外)とシンガポール(エコノミーでも50%)だ。

新規開設路線や競争の激しい路線には、割り増しの得点を設定することもある。使いやすいりはユナイテッド、JAS

せっかく一生懸命ためても、無料航空券の設定目標が高ければ使いにくい。二万マイルでソウル、香港、中国などの近距離のアジア、四万でハワイ、五万1六万で米本土というのが標準だが、ユナイテッドならばロス往復二回でバンコクまでの無料チケットをもらえる。

日系は五万五〇〇〇マイルで欧州往復エコノミークラスの無料航空券がもらえるのに対し、ルフトハンザ、スイスなどはコー万マイルも必要だ。

JASは一万で東京-大阪、一・五万でソウルと、他社に比べて低い土に、無料航空券は第三者にも譲渡可能(一般的には二親等以内に限る)。そしてユニークなのはタイが始めた「不足分の現金買い取り」だ。

五〇ドルで二五〇〇マイル、最大二万マイルまでを買い足せる。「もうちょっとで」という場合には便利なのだが、タイはもともとの設定が高すぎる(バンコク往復五万マイル)。

そして重要なのは無料で使える路線が豊富にあること。デルタでためても東南アジアには路線がほとんどない。米本土往復は最低六万マイルだし、提携の大韓航空を使っての香港でも三万マイルが必要だ。

その点、ノースウェストとユナイテッドは長距離の米国本土路線と東南アジアに豊富な路線をもつ。特典の景品には、バッグ、食器など品物を用意しているエアラインもある。

マイレージの賢い使い方

夫婦二人で世界一周を夢みてパンーアメリカン航空の搭乗マイレージをせっせとためていたが、あと一歩というところでパンナムが倒産し、長年の夢は露と消えてしまったという人がいる。

マイレージサービスは、アメリカン航空(AA)が一九八〇年代初めにスタートさせ、パンナムが取り入れて世界中に広がったといわれる。乗客の搭乗実績距離(マイレージ)に応じて得点がたまり、得点によって無料航空券や利用クラスのアップグレード(ひとクラス上の航空券を発券する)券などをもらえる仕組みだ。利用者が自分の都合で好みに合わせて獲得した得点を使えることから、好評を得ている。

一般的なプログラムでは、搭乗実績二万マイル(東京-ロス往復二回程度の合計)で東南アジアの都市、五万―六万マイルでアメリカの都市、五・五万―七万マイルでヨーロッパの都市への無料往復航空券が于に入る。ただし、各便とも利用可能な席数が制限されており、繁忙期に希望のフライトを押さえるのは簡単ではない。

日系エアラインも九三年から本格的に導入した。当初はパックツアーや格安航空券を対象外としたため不満が大きかったが、最近になって欧米系と同様に五〇%だけ加算することにした。

エアラインの競争が激しいと条件は利用者にますます有利になるが、アメリカン航空が交換率を切り上げて、利用者が無料チケットを手にするハードルを高くし、行使しにくくした例もある。利用者の関心は、どこのエアラインのプログラムに入会するのが一番トクか、にある。

困ったときには?

手荷物の紛失

エアラインがチェックインのときにくれる書類で重要なのが「バゲージ・クレーム・タグ」の半券だ。手荷物の引き換え証となる。到着空港で預けた荷物が出てこなかった場合には、この半券をもって「ロスト&ファクンド」ガウンクーへ行って探してもらう。

乗り継ぎ空港での日本語対応

日本人の語学べ夕は世界でも有名だが、外国社の中には乗り継ぎ空港に日本人社員を配置しているエアラインもある(エールフランス、SAS、KLMなど)。

また、係員はいなくとも、日本語専用の案内電話を用意しているのはルフトハンザ(欧州コーカ国で朝八時から夜九時まで対応)、SAS(欧州一三力国でフリーダイヤル)、エールフランスは空港、パリ、デュッセルドルフからの通話が可能。ヴァージンはロンドンにサービスデスクを設置している。

国際線の付帯サービス

割引運賃でも利用できるサービス

①近くの都市への無料バス・・・他社との競争の関係上、エアラインが近くの町へ無料バスを運行している場合がある。

日航だと、ニューヨーク→ニュージャージー、フランクフルト→デュッセルドルフ、アムステルダム→ブリュッセル、北京→天津。全日空(普通運賃)では、フランクフルト→デュッセルドルフ、北京→天津、青島→市内。ハイヤーでロンドン空港から四〇キロ以内、北京空港から五〇キロ以内。

②事前の座席指定・・・窓側、通路側、前部、トイレに近い場所など希望の座席を確実に確保できる。もちろん、希望の座席が先にとられていればだめだが、長いフライトを快適に過ごすには大切なことだ。

格安航空券でも利用可能なサービス

提携ホテルが割引で利用できる。多くのエアラインで実施していて、高級ホテルが多い。

個人正規運賃で利用できるサービス

ビジネス、ファーストクラスの正規運賃で購入した場合(一部エコノミークラスにも適用)に利用できるサービス。

①無料の手荷物引き取りサービス・・・スーツケースなど重い手荷物を自宅や会社から出発空港まで無料で運んでくれる。日航、全日空がほとんどの国際線で実施している。

②空港ラウンジ・・・便の出発までのひとときを過ごせるVIPラウンジ。アルコールを含む飲み物、軽食、新聞・雑誌の用意かおる。ほとんどのエアラインが実施。

③コート類の無料預かり・・・成田、関西空港でコート類を無料で預かってくれる。全日空で実施。

④携帯電話のレンタルサービス・・・多くのエアラインで実施している。ただし通話料は利用者負担。

⑤空港とのアクセス交通無料券・・・空港と市内とを結ぶ鉄道やバスのアクセス交通の無料券を支給。ヴァージン・アトランティックなど。

国際線の乗り継ぎで羽田-成田空港、伊丹-関西空港を利用する場合のリムジンバスの無料チケット(日航、全日空)その他、新路線開設キャンペーンや路線のテコ入れのためにハイヤーを回してくれる場合もある。

便利なチェックインサービス

グループはまとめてチェックイン

家族やグループはまとめて搭乗手続きをしないとソンする場合がある。座席がバラバラになるだけでなく、無料手荷物の計量をまとめて行うと、許容量はグループ全体で判断されるため、一人、二人の荷物が無料の範囲をオーバーしていても超過料金を取られることがなくなる。

特定便割引でも繰り上げは可能

便の変更はできない原則になっている特定便割引運賃だが、当日に事前のフライトに十分な空席がある場合に限り、空港で搭乗便の繰り上げができる(事前に電話で予約状況を確認しておくと確実)。

たとえば三時発フライトの特定便割引航空券をもっていて、一時発の便に当日空席があれば、追加料金なしで変更がきく。エアラインとしては、販売チャンスを増やしておいた方が販売増につながる可能性があるからだ。

したがって、遅めのフライトを特定便割引運賃で用意しておいて、早めに予定が終われば便を繰り上げることができるが、逆はできない。

幼児を連れているときのサービス

幼い子供を連れている乗客にはさまざまな便宜がはがられている。航空券を購入するときにその旨を伝え、チェックイン時に確認すれば、幼児用の簡易ベッドの利用できる席を用意してくれるし、搭乗のときには一般乗客に先立って搭乗させてくれる。また、機内では、ミルクの保温、紙オムツや絵本、おもちゃなどの用意がある。

バリアフリーへの対応

近年、身体の不自由な乗客への航空会社の対応はかなり整ってきた。介護者への割引運賃の適用や、機器の持ち込みなどを事前に相談する窓口を設けているエアラインもある。

旅行代理店を活用しよう

航空にはさまざまな規則や特例があって、わかりにくい。過去の歴史や国の利害関係などがぶつかりあって妥協や調整がはかられたルールも数多くある。「遠くの路線は近距離よりも高い」という一般常識さえも通用しない。満足できる旅行をするために、エアラインや旅行代理店を積極的に活用しよう。

利用しないとソンするサービス

他社への振り替え

世界の民間航空業界は決済機能が発達しているので、A社の航空券で一部B社に搭乗する場合や、旅行の行程で数社の航空券を組み込んで使用する場合も、A社に代表して発券してもらえる。

国際線はIATAに清算所があり、世界の約三〇〇社の相互連帯輸送契約に参加している。したがって、格安券や特定の割引航空券を除く各社に共通な航空券をもっていれば、乗客の都合で他社に振り替えることもできるので、A社のフライトが大幅に遅れる場合には、他社に振り替えて利用することもできる。

また、日本の国内線の場合にも大手三グループの各社は相互連帯輸送契約に参加しているので、他社への振り替えがきく。出張で仕事の都合で遅くなった場合や、予定よりも大幅に早くなった場合には、他社フライトへ変更すると時間をむだにしないで済む。

特に、東京-大阪、東京―広島線のように、三社のフライトが措抗して飛んでいる路線では、有効だ。ただし、国内線も普通運賃、往復割引、回数券など、運賃が共通なものに限られており、特定便割引などでは使用できない。

海外乗り継ぎ割引運賃

国際線への乗り継ぎのために国内線を利用する乗客が利用できる割引運賃。たとえば、鹿児島から関西空港乗り継ぎでロサンゼルスへ向かう場合、鹿児島-大阪間の運賃が五割引となる。正規運賃で同じ航空会社の利用が前提なので、地方で格安券を買う場合には、国内線の乗り継ぎ運賃を含めてトータルで比較しないと、ソンをする。

スルー・チェックイン

乗り継ぎ便をまとめて「通しでチェックイン」すること。たとえば旭川から羽田を経由して宮崎まで飛ぶ場合に、旭川空港で旭川-羽田のぶんだけの搭乗手続きをすると、羽田でもう一度チェックインをやり直さなければならないが、最終目的地の宮崎までのスルー・チェックインをすると、航空会社にその旨が伝わり、荷物も空港の人が積み替えてくれる。

羽田で手荷物を引き取って汗をかきながらロビーを走り回ることなく、降りたゲートからそのまま宮崎便のゲートへ向かえる。

スルー・チェックインが効果を発揮するのは搭乗便が遅れたときで、航空会社は接続客を検索し、係員が速やかに誘導したり、少々の遅れは待っていてくれる。

国際線ではこのメリッ卜は大きい。乗り継ぎ空港で出入国手続きをする必要がなくなるので、ゆったりとトランジット・ラウンジで過ごすか、免税店でショッピングを楽しんでいればよい。ただし、スルー・チェックインは、同じエアラインか、提携している会社でないと取り扱ってくれない。