2016年2月4日木曜日

「補助金臨時整理法」

同じころ、消費税を福祉目的税にする案も浮上してきた。もともと消費税は高齢者対策を口実に導入され、引き上げられたにもかかわらず、本来の目的に使われたのはその一部だったから、それも一案かもしれない。しかし、福祉目的化されると、それを口実に消費税の引き上げが加速される恐れがある。

それに後にみるように、年金問題でまず実行すべきことは、日本の特異な土建国家を解体して、公共事業費を大幅に社会保障に振り向けることでなければならない。年金制度が大幅に改定された一九八五年には、社会保障制度の他の面でも、国民にとってもう一つありかたくない出来事があった。

中曽根首相はこの年、「補助金臨時整理法」を国会で成立させた。第二臨調の提案を具体化したもので、地方自治体への補助金の補助率を削減するものだった。この法律によって、生活保護措置費は、一九五〇年の生活保護法の制定以来、国が十分の八、自治体が十分の二と定められていたが、一九八五年度に限るという条件で、国が十分の七、自治体がに十分の三に変更された。

同様に、保育所措置費、老人ホーム措置費、障害者(児)保護費などの国の負担も軒並みに十分の八から十分の七に引き下げられている。当初、これらの引き下げは「一年限り」の「暫定措置」というものであった。ところが、大蔵省は財政状況の悪化を理由に、引き下げの継続を主張し、中曽根政権は結局、一九八六年度から三ヵ年、「暫定措置」を延長することと補助率のさらなる引き下げを追加決定した。

この決定によって、法律の名前でいうと、「生活保護法」「精神衛生法」などの国家負担率は十分の七が継続されたが、「老人福祉法」「児童福祉法」「身体障害者福祉法」「母子保健法」などの補助率は十分の七からさらに十分の五に大幅に削減された。